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全国都市監査委員会

 

地方公共団体の監査制度の充実強化に関する意見

〜第31次地方制度調査会答申を踏まえて〜

 

 

平成281214

全国都市監査委員会理事会

 

平成28316日に第31次地方制度調査会から内閣総理大臣に対して「人口減少社会に的確に対応する地方行政体制及びガバナンスのあり方に関する答申(以下「答申」という。)」がなされた。

答申は、地方公共団体における内部統制の制度化や、監査委員監査の具体的強化策等に言及し、今後の地方公共団体における監査委員監査制度に対して重要な影響を与える内容と認識している。

全国都市監査委員会(以下「全都監」という。)は、規模の大小、また多様な地域特性を有する全国789市、24組合等の地方公共団体の監査委員により構成されており、こうした現状と監査実施に係るコストを踏まえた上で、監査制度の充実・強化を図るよう、以下のとおり意見を述べる。

 

   統一的な監査基準の策定

答申では「監査を実施するに当たっての基本原則や実施手順等について、地方公共団体に共通する規範として、統一的な基準を策定する必要がある。」とされ、策定主体として「地方公共団体が、地域の実情にも留意して、専門家や実務家等の知見も得ながら、共同して定めることが適当である。」と述べられている。

全都監は地方公共団体の監査委員により構成する組織として初めて、規範性を有する「都市監査基準」の制定に取り組んできた。このことは規模や特性等が異なる地方公共団体全体の監査に対する意識の向上に資するものと理解している。

答申において「地方公共団体が、地域の実情にも留意して共同して定めることが適当」とされているが、統一的な監査基準を策定するということであれば、地方自治の原則に従い、公監査の特性と民間企業監査との差異に留意した上で、「都市監査基準」など全都監の取組や、多様な意見を適切に反映できるように、地方公共団体が共同で進めるプロセスが必要と考える。

 

 

   全国的な共同組織の構築

答申では「地方公共団体に共通する監査基準の策定や、研修の実施、人材のあっせん、監査実務の情報の蓄積や助言等を担う、地方公共団体の監査を支援する全国的な共同組織の構築が必要である。この場合、小規模な市町村等からの求めがあるときは、その監査の支援を当該共同組織が行うことも考えられる。」と述べられている。

全都監は約800の団体から構成されていることから、各会員都市間では監査実施体制等に大きな差異が生じているため、全国的な監査機能の向上の観点から、今後は中小会員都市から監査実務に関する支援が一層求められるものと考えている。

「全国的な共同組織」という考え方について、会員都市からは、共同組織による地方自治への干渉可能性に対する懸念もあり、全都監をはじめとする既存の地方公共団体で構成する組織を活用する方策を検討すべき、との声も上がっている。

そうしたことから、共同組織の必要性とあり方について、まず、地方公共団体の主導による議論を尽くす必要があるのではないかと考える。

 

   内部統制の制度化及び長の評価内容に対する監査

答申では「内部統制体制を整備及び運用する権限と責任は長にある。」、また、内部統制を制度化し、その取組を進めることにより「監査委員の監査の重点化・質の強化・実効性の確保の促進等の意義が考えられる。」と述べられている。

内部統制と監査は密接不可分の関係にあることから、首長が主導する内部統制体制の整備及び運用の制度化に際してはその具体的な方向性を明らかにすることを求めるものである。

なお、内部統制体制の整備に当たっては、効果的かつ効率的な技術的助言や必要な情報提供等を的確に行うことが不可欠と考える。

一方、答申では「長は、その運用状況を自ら評価し、その評価内容について監査委員の監査を受ける必要がある。」と述べられているが、「内部統制の評価内容についての監査」の検討に当たっては、内部統制の限界も考慮し、効率的・効果的な監査に資するよう配慮すべきであり、また、各地方公共団体においては必ずしも内部統制体制が十分に整備されているとは言い難い状況であることを勘案する必要があると考える。

 

   包括外部監査制度のあり方

答申では「監査委員の監査を外部の目から補完する観点から有用であることから、条例により導入する地方公共団体が条例で頻度を定めることができるようにすることにより、包括外部監査制度導入団体を増やしていくことが必要である。」また、「適切なテーマ選定に資するよう地方公共団体をめぐる課題についての情報提供を行う等、包括外部監査人をサポートする仕組みや、包括外部監査人に対する研修制度の導入により、その監査の質を更に高める必要がある。」と述べられている。

しかし、包括外部監査制度導入後、約20年を経過し、その評価については様々な意見があることから、監査委員監査との役割の整合性、包括外部監査の効果や制度のあり方等について総括を行う時期を迎えているものと考えている。

 

   監査委員事務局の共同設置

答申では「市町村が連携して事務局の共同設置を行うことも有効な方策である。」と述べられている。

全都監としても、すでに一部の会員都市間で監査委員事務局の共同設置を行った実績もあることから、共同設置の有効性の有無をモニタリングする等、研究を重ねてまいりたい。

以上